髭とダンディズム

今日の東京の気温は36°を超えるらしい。この中、マスクをして仕事しなければならないと思うとげんなりする…一日中、自宅の布団から半径1メートル以内の安全な場所でAmazonプライムビデオを観ながら、駄菓子屋に売っているプラスティックで円形でオレンジの蓋のケースに入っているスルメイカを食べていたい。そんな正直な気持ちとは裏腹に、就業後にランニングをしながら自宅に帰るなんて、血迷ったことをする日もある。理由は…クソ面白くもないのだが、健康のためだ。ただ、甲斐性はないので、気を紛らすため、その間ずっと音楽を聴きながら走っている。

Official髭男dismをよく聴いている。ちなみに、私は髭もはえていないし、ダンディズムの欠片もない。このブログでもペンネームを使っている。Official髭男dismとは全く真逆の人間だ。言ってみるなら、「非公式すね毛すら薄い乙女ティックおじさん」だろうか。

そんなことを考えながらニヤニヤ走っているのである意味本当の変態だ。加えて、一昨日は帰宅後に強い頭痛に襲われた。熱中症だ。健康のために走っているのに本末転倒である。

熱中症になりながらも思い出したのが、あれは、昨年の冬だったか、多摩川の河川敷で開かれた小さな規模のマラソン大会に出場した時に見掛けたセーラー服を着て大会に参加していたおじさんだ。決して人を笑わせようとしていた訳でもなく、かと言ってもちろん罰ゲームとかで恥ずかしそうという訳でも全くなく、そして走るのが速い訳でもなく、敢えて言えば「愚直」という言葉が似合うだろうか、真っ直ぐ黙々とに走っていた。

そのマラソン大会のコースは、周回コースで、何度もそのおじさんとすれ違った。はじめのうちは、偏見の眼差しを向けてすれ違っていたが、徐々にその距離は縮み、最終的にはゴールの前に追い抜かれてしまった。

彼と呼ぶことが相応しいかわからないので、ここでは敬意を込めて彼女と呼ぶことにするが、彼女から学ぶことは多かった。人目を気にせず自らをさらけ出す潔さ、そして、目が座っていてゴールだけを目指す真っ直ぐさ…なんて、自分が小さい人間なのか…。もしかしたら、自分が今もなお、走っているのは、健康のためなんかではなく、あのおじさんのためというかあのおじさんへの憧れから、なのかもしれない。

THE BLUE HEARTSの「青空」という曲にこんな歌詞がある。 「生まれた所や皮膚や目の色でいったいこの僕のなにがわかるというのだろう」 今回のエピソードとは全く関係ないが、紹介をしておく。

今年の多摩川の河川敷で行われたマラソン大会は、中止されていた。来年の冬の大会もおそらく中止だろう。次にあの大会が開かれることがあったら、勇気を振り絞っておじさんに話し掛けたい。「僕、走っています」…と。

自分の書いた文章で人を感動させたい!という一心で今回のブログを書いた。「ランニング」「マイノリティ」「歌詞の引用」「ブルーハーツ」「再会」「倒置法」など感動のエッセンスになりそうなワードや技法を文章の中に散りばめてみた。この文章で涙を流した人のために、最後に黄色いハンカチを紹介しておく。もちろん、この話は全て実話である。熱中症の後遺症は脳に多大な影響を与えるようだ。皆さん、水分補給はこまめにして暑い夏を乗りきりましょう。